エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
「そうだったんですね……」

嬉しい……。先生が、私のことを考えてここへ来てくれていたなんて。

ここが、誰もいない場所なら、すぐにでも走って先生の胸に飛び込みたいくらい。

だけど、私は自立した女性にならなければ。先生の足手まといになる存在にはなりたくない……。

「久美も仕事が終わりなのか?」

「はい。帰ろうかなと思っていまして……」

先生は、明日も仕事なんだろうな。もし今夜、私に会えなかったら、どうしていたんだろう。

あまり、無理しないでほしい……。私が、なにか心配かけているのかな。

「そうか……。明日は、仕事は休み?」

「はい。先生は?」

「明日は午後からだよ」

「そうですか……」

なんだか、会話をぎこちなく感じる。先生はどこか遠慮気味だけれど、私とは話しにくいのかな。

不安に駆られつつも、先生に余計な心配をかけさせたくない。無理やり笑みを作ると、彼に言った。

「先生、お体は大事にしてください。それじゃあ……」

もっともっと話したいし、会えて嬉しいと伝えたい……。でも、お医者さんと付き合うなら、自立していなければ。

身を翻したとき、突然先生に腕を掴まれた。

「どうして、そんなに避けようとするんだ?」
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