常に上手な上司の攻略法
抱きしめられたままなので、
今葉山主任がどんな顔をしているのかわからない。
でも私の顔は確実に真っ赤になっているので、
恥ずかしいけど
今はこのままのほうが良いかも…
と思ってしまう。
そして、そのまま
「私で良ければ……」
と返すと、葉山主任の私を抱きしめる力が強くなる。
こういう時、どうするのが正解かわからない私は
とりあえず本能に任せて葉山主任の背中に腕を回してみる。
そんな自分に恥ずかしくなり、
そういえば…
と言ってせっかくの良い雰囲気をぶち壊す。
呆気に取られ、力の抜けた葉山主任の腕から脱け出して自分のバッグの中から、あるモノを探す。
お目当てのモノを見つけてバッグからそれを取り出す。
「これ、葉山主任に似てたから」
と笑いながら言って、
自分の手のひらサイズの小さなペンギンのぬいぐるみを見せる。
二人で水族館で見た、
あのキリッとした顔のペンギンにそっくりなぬいぐるみ。
お土産コーナーで私にしては珍しく衝動買いをした。
それくらい葉山主任に似ているのだ。
我ながら良い買い物をしたと思う。
そんなことを考えて、今までの恥ずかしい状況をなんとか回避した。