届かぬ想い
親は東京に住んでいて深い理由は言わないが高校だけ祖父母の住む県で過ごしたこと。

最初から大学は東京に戻る予定だったこと。


その話を聞いて俺は、


「同郷ぽくないってずっと思ってたんだよ」

「はは、おまえもな」


俺?

東北にある県で生まれ育った。

父親はレストランを経営していて子供の時はよく母親がその店に連れて行ってくれた。

高校になる頃には父のレストランはいつのまにか外食チェーン店になり都内に店舗を持つまでになった。

そんな父は家にはほとんど帰って来ず、俺の進路の事にだけは口出しをしてきた。


東京にあるこの大学で経営学を学べと――――


そして決められた道をそのまま歩んでいる俺。


「…大学を出たら親父の会社に入って、親父のいう人と結婚して、そのまま会社を継いで。俺ってなんだろな」

「神代くんって案外つまんないわね」


その声にハッとして上を向くと、アヤノが俺に向かって怒ったように言い放っていた。
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