届かぬ想い
目の前にあるビールのジョッキを見つめながら、独り言のように続ける優太。


「オレさ、留学のこと全然聞かされてなくて、行く前の日に電話が来て…そのまま行っちゃった」

「はぁ?なんでそのまま、なんだよ?」


大体、留学決める前に聞くだろ?
彼氏と遠距離になるんだし


「なんでだろ?オレもわかんない」

「勝手だな」


やっぱり勝手な女だ。

試しでいいから付き合えって言っておいて、そのまま消えるとか

普通、そんなのありえない


「や、勝手なのはオレのほう」

「は?」

「オレが甘えてたんだ、アヤノに」


わかんねぇ

甘えるも何も、付き合ってるんだしそういうのってお互い話すもんじゃねーの?


「ダカラたぶんアヤノは、オレの前からいなくなったんだ」

「ごめん、オレ全然わかんねぇ、そういうの」

「…朔也は、ダイジナモノちゃんと見つけなよ?」

「ハッ、見つかればいいけどな」


それからは二人、あまりしゃべらずにただそのまま酒を飲み続けた。
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