届かぬ想い
3月29日 空港
三年前の正月に親父と話をして以来俺は経営学をきちんと学ぼうと思った。

親父の言われるがままに入った大学の学部だったが、向き合ってみればそれもかなり楽しいものに思えた。

あいかわらず恋愛には真剣にはなれなかったが。


そんな大学生活はあっという間に終わりそして今日、イタリアに発つ。



――持ち物はカバンが一つ。



見送りは一人。



純哉とジュンはすでに就職先の会社に行き始めている。

優太は大学院に進学が決まっていて、「暇ダカラ」と言って見送りに来てくれていた。


「朔也、他の荷物は送ったの?」

「いや、これだけ」

「…ヤル気だねぇ」

「あぁ」

「帰ってきたらおいしいモノ食べさせてよ」

「了解。じゃ、行くよ」

「気をつけて」


期間は三年。

その間に全部自分のものにする。
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