届かぬ想い
2月10日 イタリア・モンタルティーノ
イタリアでの生活は24時間ほぼ料理漬け。

自分の家に帰ってからも独自のレシピ製作や経営学の勉強に費やした。

イタリア女との交流なんてない。

そんなこと、微塵も考えもしなかった。




そう、あの日まで―――



いつものように仕事を終えて帰ろうとしていたら

たまにはいいだろうと同じ店のスタッフに誘われた。

修行や勉強も大事だが、店のスタッフと交流を取ることも円滑に仕事を薦める上で重要なこと。

大学のうちにイタリア語を学んでいた俺は仕事中に言葉で困るようなことはなかったが、考えてみれば必要なコミュニケーションさえ取るのを怠っていた気がした。


みんなワインばっかり飲むと思ってたら案外とりあえずビールだなんて知ったのも最近の事。

知識を詰めることばかり考えて、これだったらわざわざイタリアまで来た意味がないと気付いた。

それからはきちんと休みも取った。

修行に支障をきたさない程度に色んな所にも出かけた。


まさか、…会うなんて―――
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