届かぬ想い
今日は日帰りできるワイナリーに来ていた。

見学できるワイナリーは時間が出来れば訪れていた。

友人と来ることもあるが、一人で来ることの方が多かった。

今日も一人。




説明を受けた後、400年前のものだという領主の館の暖炉のある部屋でテイスティングをしていると、外からにぎやかな声がしてきた。

どうやら息子が友達を連れて帰ってきたらしい。

俺は一人だし、ここに来てもらっても構わないと言うとすぐに彼らを呼びに行った。

紹介されたワインをメモを取りながら味わっていると、彼の息子とその仲間らしき人たちが入ってきた。

数人の男女。カップルというよりは仲間といった感じの――






「……神代、くん?」



久しぶりに聞く日本語だった。


5年ぶりに見る彼女は、俺の顔を見るなりきれいな顔をゆがませた。



――――何故ここにいるのか




「え?違ったかしら」


もう一度口を開いた彼女に俺はいつもの笑顔を張り付けて慌てて答える。


「あ、いや……アヤノちゃん、久しぶり」
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