届かぬ想い
偶然に再会したローマでメアドを交換して以来。

アヤノは気まぐれに俺を呼び出した。


彼氏に振られた。

研究がうまくいかない。


俺はただ隣に座って飲んでいるだけで何をしたわけでもない。

友達と言うには少し遠く、ただの飲み仲間ぐらいの位置。


だから俺が日本に帰ったところでアヤノにとって困るものでもないだろう。


それに――――


嫌いだったはずなのに、

隣で表情をどんどん変えて話す彼女に

さすがに俺も自分の気持ちに気づいていた。


だから限界だった。

アヤノの近くにいれば触れたくなる。
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