届かぬ想い


「神代朔也と申します。本日は突然の申し出にお時間いただきありがとうございます」

「まぁ、座りなさい」

「失礼します」


アヤノの父親は厳格なタイプと聞いていたが、年齢のわりにかなり若く見えた。きっと純哉が年取ったらこんな感じになるんだろうな。


「今日は、美麗さんとの結婚を前提としたお付き合いをお許しいただけるようにご挨拶に参りました。」

「今時、結婚前提からはじめるなんて珍しいな」

「年齢も28ですし、今後の事をハッキリとさせていた方がご両親にも安心していただけるかと思いまして」

「美麗とは、いつから?」

「はい、正確には昨日。ですが、10年前からの知り合いです」

「あ、あのっ、イタリアで再会してから仲良くはしていたの。でも、付き合ったりはしてなくて……」


アヤノが説明をすればするほど、父親の顔が曇っていく。


「本日は突然でしたし、一度でお許しいただこうとは思っていません。ですが、今後の事を含めてまた改めてお話させていただきたいと思います」
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