届かぬ想い
にっこり微笑んで耳元で愛を囁けば簡単に腕に擦り寄ってくる。

そこに愛などはない。

オヤジのいうがままに敷かれてきたこのレールを進んできた人生。

愛なんてものを信頼できるほどまっすぐ育つことはなかった。

身につけたのは愛想笑いと処世術。

結局は子供の足掻き。

このときの俺は全くそんな事わかってなかった。

ただ毎日が楽しくあればいいという安易な考えしかない。




*****



「朔也くん、今日飲みに行こう?」

「いいねぇ、他に誰か誘う?」


最後の決定権は相手に委ねる。

そうすれば最後は何とでも言い逃れるから。

ん?どうする?って答えを促せば頬を赤らめて出す答えは一つ。


今日はなんと簡単で

……つまらないが


これはこれで頂いておこう。
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