届かぬ想い
5月4日 自宅
GWだということで、アヤノは一週間ほど俺のところに滞在していた。


純哉が帰ってきてドライブに行くと言い、車のレンタルとお弁当ランチの依頼を受けた。

誰と行くかなんて聞かなくてもわかるけど、何も言わないまま東京に行ったはずなのに……


純哉は三月末で東京に異動になり、すでに引っ越していた。

引っ越すと言っても、東京に親の家もあるはずだし、こっちのマンションも自分のものだからそのままらしいし身軽なもんだった。


「明日、純哉が来るよ」

「あら、そうなのね」

「面白いもん見れるから、ミレイも来とく?」

「面白いもの?彼、面白かった記憶はないけど?」


そりゃそうだ。

面白いのは、純哉があの娘を溺愛してる様なんだから。


「イメージ、一変で崩されるよ」

「……よくわからないけど、」


学生時代の純哉は、見た目どおりの冷たい印象で去るものは追わず、人にも物にも執着しない感じだった。

執着しないって意味では俺と似ていて、そんなところもつるむようになったきっかけだった気がする。
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