届かぬ想い
いつか、四人で一緒に出掛けたら楽しそうだ。


「ミレイ、ひとつだけ聞いてもいいかな?」

「なぁに?改まって」

「何で、優太に言わずに留学したの?」


そう聞いた瞬間、顔を曇らせて下を向くアヤノ。


「…怖かったの。私だけが好きで、その気持ちばかり大きくなって、だから逃げ出したの」


純哉が言ってた、「好きすぎたから」じゃないかという推測もあながち嘘じゃなかった。


「弱かったの、あの頃の私」

「でも、優太も向き合おうとしてたよ」

「……そう」


過去の事だ。

それでも、まだ優太の事思っているんじゃないかと疑っている自分もいる。


「優太と向き合ってたら、今も付き合ってた?」

「それは、ないわね。優太と私は多分似すぎてるから」


自分でもわかってたのか。


「それに優太はいい人見つけたみたいよ?」

「そうなんだ?」

「私もやっと気づけたしね」


ずっと届かなかった想い。

というより届けられなかったその想いを

10年経った今、たしかに本人に届けることが出来た。

だから今は

誰かを想う気持ちの切なさや

想いを伝えることの大切さを

強く感じている。
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