続*もう一度君にキスしたかった


下心、だなんて自分を悪く言うけれど、決して朝比奈さんは彼女の意思に反して動こうとしたはずはない。
そんな人ではない。


「今の本社でもね、補佐からマネージャーになる女性社員はわずかだ。だから余計に肩身が狭い。真帆も伊崎くらいしか頼るところがない、男並みにこなさなければと片意地を張る」

「そんなことは……」

「ない?」

「……少し」


女性蔑視、というほどではないけれど、私も常々、思うことがある。
たとえば全く同じ能力の男女なら、私が例えば経営者や人事など選ぶ側の人間ならば、無難に男性を選ぶだろう。


安全面にそれほど敏感にならずに済む。
女性ならいつか結婚して退職したいと言うかもしれない。


続けるにしても、出産や子育てなど絡んでくれば業務に支障が出ないはずはない。
もちろん、男性だって子育てに関わればそういう事態もあるだろうけれど、圧倒的に女性に負担がかかっているのが今の社会の現状だ。


そんな中で女性を選んだメリットを雇用主に何か残さなければ、『女性を選んで良かった』などと思ってもらえることなどまずないのじゃないだろうか。

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