続*もう一度君にキスしたかった
「……タイミング?」
首を傾げる私。
けれども、彼の表情でなんとなく、予感はあった。
「僕は早く、君を独り占めできる日がくればいいと思っているけどね」
この会話の流れで、このセリフの意味を、はき違えることはなく。
嬉しい反面、私は頭が真っ白になった。
そんな私の表情を見て、彼が腕の力を強めて一層上半身を密着させる。
「あせらせたいわけじゃないんだ、僕はそういうつもりでいると伝えたかっただけ」
絡まる腕の強さが、彼が私を必要としてくれている思いの強さにも感じて、きゅっと胸の苦しさに襲われた。
嬉しい。それは本当だ。
けれどそれを声に出そうとしない自分の唇に、感情に、腹立たしさを感じた。
「真帆」
彼の手が、私の顎を持ち上げ固定した。
かと思えば、いきなり深く合わさった唇にびくんと腰が跳ね、それからゆっくりと身体の力を抜いた。
舌が絡まり、吸い上げられて甘噛みされ捉えられる。
舌先同士を執拗に擦り合わせ、身体の力が抜けてく私を彼の腕がしっかりと受け止めた。
いつ看護師が来るかもわからない病室での官能的なキスに、抗議する隙もないくらい激しいものだった。
私の唇が何も言わないことを、キスのせいにした、そんな気がする。
朝比奈さんが珍しく、焦りを見せた……そのことで私は尚更強く、さっきの会話の意味を意識した。
結婚。
そして彼はきっと、私に仕事を辞めて家に居て欲しいと思っているんじゃないだろうか。
彼の焦りは、ジレンマだ。
私が仕事を、彼からもらったエリアを大切にしていることをよくわかってくれている。
だからこそ、これからも仕事がやりやすいようにと考えてくれている。
けれど彼の本心は、決してそれを望んではいないのだ。