続*もう一度君にキスしたかった
それ以降朝比奈さんがその話題に触れることはなく時間は過ぎ、夜、私は消灯時間ギリギリまで病室に留まってからホテルの部屋に戻った。
明日は朝比奈さんの退院手続きをして関東に戻らなければならない。
朝なるべく早くここを出てチェックアウトしなければ、と一通り部屋を見渡して忘れ物がないか確認をした。
朝比奈さんの荷物は殆どまとめた状態で置いてあったし、私は手ぶら同然で来てこっちで必要なものをいくつか買っただけなので、身軽なものだ。
早々にベッドに入ったが、どうにも目が冴えて眠れなかった。
頭に余白ができればすぐに、昼間の会話が思い出されるからだ。
今まで結婚を全く意識してなかったわけじゃない。
私だって、いつか朝比奈さんとそうなれたら……きっとそうなると、信じてはいた。
だけどそれは、すぐ目の前のことではなくて、漠然としたものだった。
そう、『いつか』に過ぎなかった、未来の姿。
それを今日、朝比奈さんが手繰り寄せ、私の手の届く範囲にまで近づけさせた。
私に仕事だけでなく結婚も意識するように、と朝比奈さんに仕向けられたような気がする。