続*もう一度君にキスしたかった
ごろん、とベッドの中で寝がえりを打つ。
結婚、仕事。
結婚したら、漠然と仕事は辞めるか時間に融通の利きそうなものに変えるものだ、という先入観がある。
だって、結婚の先に予想するものは、当然出産や子育てだ。
私の両親は共働きで、母親は好きで続けた仕事のはずなのに途中随分苦しそうでよく父と喧嘩していた。
「けっこん……かー……」
仕事は、今はまだ、辞めるという選択肢に手を伸ばす気には、なれない。
続けたい。
じゃあいつになったら、と言われるとわからない。
じゃあ共働きで、となると。
「……マネージャーしながら、じゃ、なあ」
繁忙期は確実に、家庭が疎かになる。
もし子供が出来たら?
クリスマスが近づくとほぼ家に寝に帰るだけ、クリスマス当日も当然仕事になる私たち。
「……いやだなあ、それは」
だからきっと、朝比奈さんは仕事の流れからのあのタイミングで言ったのだ。
独り占めしたい、と。
あれは、いつかは家庭に入って欲しいという意味だ。
結婚するなら、子供は欲しい。
じゃあ、子供はずっと後でなら?
と考えるとどうしても仕事にタイムリミットが出来てしまう。
結婚も子育ても、きっとタイミングというものがある。
そういうのを考えなければいけない、節目に近づいてきたのだな、としみじみと実感して答えは出ないまま、いつのまにか眠りに落ちていた。