続*もう一度君にキスしたかった
小さい子供には退屈でじっとしているのは無理だろうと、催事スペースのすぐ隣に用意されていたキッズコーナーに向かう途中だったらしい。
よく見ればベビーカーも携えていたりして大変そうだったので、そこまでベビーカーを押してついて行くことにした。
「助かったよ、こいつ全然乗りたがらなくてさ」
「そうなんですか」
「走るか抱っこのどっちかだよ、ベビーカー全く意味ねえ」
柔かいマットの敷かれた、カラフルなスペースには柔らかいクッションで作られた大きな積み木のようなものがいくつも転がっていて、小さな子供が元気に走り回っている。
翔くんも嬉々としてその中に混じりに行った。
子供ってすごい。
気後れしないのかな。
間宮さんと並んでその様子を眺めていると、「ふっ」と笑う声がして隣を見上げる。
じゃれあっている翔くんを見ている、その横顔がとても……お父さんだった。
仕事の時に見かける時も、営業の人間らしくにこやかに笑っているイメージではあったが、その笑顔とは全然違う。
なんだかとても、色々なことを聞いてみたくなった。
私にはまだ、結婚した後のことや子育てのことを聞くことができる友人がいなかったから。