続*もう一度君にキスしたかった
することは決まっている。
そのお客様の連絡先を聞けば、遠くない場所だった。
ただ、商品が夏物商品だったのでもうどこの店も在庫のみで動いている。
今から新たな商品を包装しなおして直接届けるわけにいかず、熨斗紙と包装紙を持ってお伺いするしかない。
お詫びの連絡をして、時間をいただけるかどうかの許可を得なければならない。
その電話の間にカナちゃんの店に熨斗紙の準備をしておいてもらう。
聞けば中々の量だった。
お供えの商品は、一番小さなジュレのセットを三十個だ。
大きく箱詰めされてお供えの熨斗を、その中の三十個には粗供養として配れるようにとひとつひとつ熨斗がつけられていた。
『東武百貨店なら、と信用してお願いしたのにこんなことは初めてだ』
「大変申し訳ございませんでした」
『夕方六時以降だからな』
ぶつっ、と通話は切れた。
相手は年配の男性の声だった。
電話越しで一頻り怒鳴られたあと、少し声のトーンを下げて最後には訪問を認めてくれたが仕事で居ないから夕方六時以降に来てくれという。
なら、夕方に出れば間に合うから、その間に東武に行って詳しい話と、東武側の責任者にも会って説明しなければならない。
はー、と深々と溜息を吐いてから、ぱんっと両手で挟むようにして頬を叩いて気合を入れた。