続*もう一度君にキスしたかった


朝比奈さんの言葉で、結婚を意識するようになってしまったこと。
もちろん嬉しいし、結婚するなら朝比奈さんしか考えられないこと。


だけど、今まで夢中でやってきた仕事を自分自身すぐに手放せるほど十分にやってきたとは思えていないこと。
かといって、両立する自信があるわけでもなく……。


よく考えれば、まだプロポーズされたわけでもないのに、意識し過ぎていたような気がしてきて恥ずかしい。
なのにそれを膝の上から降ろしてくれないまま綺麗さっぱり喋らせた朝比奈さんは鬼だと思う。


しかも、膝の上に跨るように座らされ、真正面から向き合う状態だ。
恥ずかしさにどんなに目を逸らしても、朝比奈さんにじっと見つめられていることは嫌でもわかる。


「……私、会えなかった三年、いつか朝比奈さんに褒めてもらいたくて、がむしゃらに頑張ってきました。でも、それだけじゃない。私自身やりがいもあったし店との絆とか、大事にしてるものもたくさんあって……」

「そうだね」


朝比奈さんが、指の背で私の頬を撫でる。
こっちを向いてと言われているようで、ちらりと視線を彼に戻した。


「わかってるよ。僕に認められました、はいそれじゃあって。そんな薄情な仕事をしてきてないことくらい」

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