続*もう一度君にキスしたかった


背中にソファのクッション、真上から微笑む朝比奈さん。
ソファの淵に手をかけて、やんわりとその空間に閉じ込められているような錯覚に陥る。



「その気って、どういう」

「ん? 仕事よりも結婚したいって思えるように?」


そのまま距離を詰められ、額や頬、唇にいくつも優しいキスが降った。
そこから唇は、耳、首筋、襟を引いて鎖骨へと、徐々に際どい場所へと近づいて、私の肩がぴくっと跳ねた。


すっかり慣らされている私の身体は、甘い空気を感じただけで期待し始めてしまう。
だけどそれは、あくまで身体が、であって、今ここで心までこんな行為で流されてはいけない。


「やらしいことして無理矢理言わせる、とかいうのはナシですよ」

「そんなことしないよ、これはコミュニケーション」


そうして唇は重なり、深く濃く、蕩けるようなキスになる。


……良かった。
この方法で責められていれば、きっと私は朝には結婚すると言ってしまう気がする。


そういう形で納得させられるのは嫌だ。

< 135 / 166 >

この作品をシェア

pagetop