続*もう一度君にキスしたかった


宜しくお願いしますね、と頭を下げ、バックヤードに入る。


厳しすぎただろうか?
緩すぎただろうか。


わからないけれど、私なりに、これが最善だと思える言葉だった。
そう思うと、堪えるのはまだまだこれからなのに、不思議とこの緊張感が心地よくなった。


後は、百貨店側への事情説明と夕方のお客様へのお詫び訪問だが。


百貨店洋菓子フロアの責任者への釈明は、思ったよりも責められることもなく終わった。
ただ、きっちりとお詫びしてお客様が納得されるように対応してください、とは念押しをされた。


当然だろう。
百貨店のプロパーに入っているということは、お客様の殆どはメーカーよりも百貨店へ信頼を寄せているのだ。


いい加減な対応を見せるわけにはいかない。


再び店舗に戻り、カナちゃんが再包装用の包装紙と熨斗紙をいれたショップバッグを差し出してくれる。


「大丈夫? やっぱり私も行くよ」


それは店長の顔じゃなく、友人として心配してくれている顔だった。

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