続*もう一度君にキスしたかった

「向こう、男の人だし」

「大丈夫だって。カナちゃんはカナちゃんの仕事があるでしょ」


こちらはお詫びする側だ。
変に警戒してそれが顔に出たりするのも怖い。


そしてこれは私の仕事だ。

彼女の手からショップバッグを受け取って、私は店を出てかなり早めにお客様の家の方角へ向かった。


迷ったりしてこの上時間に遅れたりするわけにはいかないので、時間に余裕を持って向こうで待つつもりだ。


ふと、スマホを手に取ると時計表示に目をやる。
お客様の家に行くのが、六時。


そこからお詫びをしてすぐに包装に入らせてもらっても、小一時間くらいかかるだろうか。
個包装だけならそれほどかからないが、更に大きくひと箱で包装もしなければならないし、最初の包装を破く時間もかかる。


朝比奈さんが帰る時間には、間に合わないな。


諦めて、今日は遅くなります、とだけメッセージを送った。
出張から帰ってきたとしても、会社に顔を出すのは明日だろうから今日のことが彼の耳に入るのは明日だろう。

< 17 / 166 >

この作品をシェア

pagetop