続*もう一度君にキスしたかった

夕方六時きっかり、男性宅のインターフォンを鳴らせば、案の定の態度で出迎えられた。
私の顔を見た途端


「お前んとこの会社は事務員を詫びに寄越すのか!」


と開口一番怒鳴られたのだ。


絶対言われると思ってた、それ。


と内心で溜息程度で済んだのは、これまでにも言われたことがあるからだ。


責任者って言ったのにこんな若い子が来るの、とか。


私のような小娘が来たのでは年配の特に男性は納得がいかないのだろう。
想定内の反応だったので、それほど狼狽えることもなく、向こうの声がそれ以上大きくなる前にすかさず名刺を差し出して自分がマネージャーであり責任者であることを説明し。


「この度は大変ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした」

「熨斗の名前を間違うなんて、どこで頼んでも今までそんなことはなかったぞ。あんたの店はどういう教育をしてるんだ」


九十度に腰を曲げ、頭上で吐き捨てるような言葉を聞く。
こういう罵声を直で受け止めるのは、メンタルに重く響いた。

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