続*もう一度君にキスしたかった
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超高速で包装し直して、出たゴミをすべてショップバッグに詰め込んで作業を完了したのは、やっぱり四十分後くらいだった。
包み直しを完了してお客さまに確認していただいた時、「もうできたのか」と怒っている以外の顔が見れたので、それだけでも少しばかり気が晴れた。


うっかり得意げな顔をしてしまわなかっただろうか。
思えばこの包装技術も、店舗にいたころ朝比奈さんが何度か手伝ってくれた時に、自分は下手くそなくせに結構重箱の隅をつつくようなことを笑顔で言うので、そのおかげだ。


『吉住は本当にラッピングが上手だね』


と持ち上げておいてからの。


『あ、この角、少し潰れてるね』
『絵柄の角度が全体的にまちまちだよね。統一出来たら綺麗だよね』


とか、にっこり笑って言われるので、『よし次は!』と素直な私はその都度改善を心掛けたものだ。
思えばあの頃から、朝比奈さんに掌で転がされていたような気がして否めない。


「お時間いただきまして、ありがとうございました。失礼いたします」


もう一度深々と頭を下げ、お客様のお宅を出た頃には。
最初のひたすら頭を下げ続けた時間も含めれば、小一時間ほど経っていた。


階段を降りてエントランスまで来た時、そこに立っている人影に、顔も見ずにお辞儀をして通り過ぎようとした。

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