続*もう一度君にキスしたかった
「真帆」
よく知っている声に呼び止められて、顔を上げる。
同時に手首を掴まれたが、驚きすぎて声も出ないまま、ぽかん、と見上げた。
朝比奈さんは苦笑して、首を傾げていた。
「お疲れ様」
「……え……えっ? なんで、ここに」
「伊崎から連絡が来て、住所は西口さんに聞いた」
経緯はわかっても、だからといって彼がここまで来たことにただただ驚いていた。
マネージャーをしていればこんなことはままあることで、そこにエリア統括が口を出すことなどまずないからだ。
「でも、なんで……」
心配して来てくれたのだとわかっていても、悔しさもある。
怒鳴られひたすら頭を下げて来た、その帰りに顔を見られるのは情けなくもあった。
「……上司としては、吉住を信頼して任せて僕が口を出すことではないとわかってるんだけどね」
困り顔の彼が言う。
その言葉はやはり優しくて、ぐっと堪えていたものが込み上げてくるのがわかった。
咄嗟に唇を噛み締める私の頭に、ぽん、と大きな手のひらが乗る。
「個人としては、真帆が心配でじっとしてられなかった」
信用してないわけじゃないよ、とそう付け足しながら彼の手が私の頭を引き寄せる。
途端に、ぶわ、と涙の膜が視界を覆った。