続*もう一度君にキスしたかった


一緒に出勤して、オフィスが近づくと彼も仕事の顔になる。
目配せだけし合って彼が統括室に向かうのを見送り、私もオフィスに入る。


早々に伊崎が向かいのデスクから声をかけてきた。
伊崎はあの一件以降、朝比奈さんがいる時には私に話しかけるのを避けているように見受けられる。


「昨日のクレーム、どうにかなったか?」

「おはよ。大丈夫、ありがとう朝比奈さんに連絡してくれたんでしょ?」


さすがに、統括がわざわざ迎えに来たと知れればやっかみも増えそうなので、小声で返すと伊崎がやけに真剣な面持ちで頷いた。


「知らせとかないと、やばい気がして」

「クレームなんてよくあることじゃない、大丈夫なのに」

「お前じゃない、俺がヤバイ」


意味が解らず首を傾げていると、伊崎はすいっとパソコンの向こうに顔を引込めた。

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