続*もう一度君にキスしたかった
ベッドを少し起き上がらせて、窓の外を見ているうちに眠ってしまっていたらしい。
ああ、そうだ。
今のは夢だ。
彼女はちゃんと、取り戻した。
傍にいる。
頭でそう認識しても、夢で生まれた焦燥感や喪失感がまだ胸を占めていて落ち着かず、彼女に向かい手を伸ばした。
「コーヒー買ってきましたよ。ごめんなさい、遅くなって。売店行く途中で……」
「真帆」
「えっ」
腕を掴んで引き寄せて、そのまま彼女を抱き締めようとした。
「キスしたい」
「えっ?」
「キスして?」
呆然とした後、真帆はみるみると顔を真っ赤にして視線をさ迷わせ狼狽え始めた。
「ちょ、あの、朝比奈さん?」
「好きだよ」
キスなんかもう何度もしているのに、随分と初々しい反応だと、がちがちに身体を固くした彼女にそう思ったが、ここが病室だからだろうかと勝手に解釈した。
彼女の背後に約二名、その理由が居たのだが、僕は寝起きでまだ少し寝ぼけていた。
僕の目には彼女しか見えていなかったのだから、仕方ない。
『幕間』END