続*もう一度君にキスしたかった
戦う女2
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院内カフェは、今は暇な時間帯なのか空いていた。


若干緊張しながら、私は木藤さんの話を聞いていて、つい視線は彼女の仕草に隙を探してしまう。


彼女ははっきりと物を言うサバサバした雰囲気はあるものの、仕草はちゃんと大人の女性の雰囲気を漂わせていて、どこかに「私の方が女らしい」と思える何かを見つけたかったのかもしれない。



「朝比奈くん、なんかいろんな意味で変わったなあって思ってたから。こないだの出張の時に言い逃げしてった彼女の存在が、すっごく気になってたのよね」

「大学の頃に比べて、ですか?」

「そうそう。まず最初にびっくりしたのは、こっちに転勤できた時かなあ」


角砂糖を二個、ミルクも入れて細いスプーンでかき混ぜる。


所作の綺麗な人だった。
少し甘党らしい。


「どっちかというといつもにこやかで、当たり障りなく人付き合いするタイプだと思ってたから。それでいてドライなとこあって、大学の時から大人びてたけどね」

「あ、わかる気がします」

「それがさー! こっちで見かけた時、まるで冷気を纏うかの如く無表情で、鬼の朝比奈なんて言われちゃって、社会人になると変わっちゃうもんなのかなー、て寂しくて。いつか捕まえて飲みに誘ってやろーと思ってたのにね。部署も違うし社内ですれ違うことも滅多になくて、そのうちそっち戻っちゃったけどね」


あはは、と笑う時は大口だ。
喋り出すと、イメージが変わってしまうタイプのようだ。

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