続*もう一度君にキスしたかった
「三年全く機会なかったのに、こないだの出張でエレベーターでばったり! 腕掴んで引っ張ってっちゃった。相変わらず酒豪だね」
「ですね、今まで酔ったとこ見たことないです……大学の時から?」
「うん、大抵周りが先に潰れちゃうから、セーブしてたとこもあるかもしれないけど」
おそるべし、あの涼やかスマイル。
朝比奈さんは大学の頃から朝比奈さんだった。
「飲み始めたら流石にあの冷徹仮面は外したけどね」
「やっぱ、大阪ではそんなに怖がられてるんですね……」
「笹木くんなんて名前聞いただけで背筋ビシって伸びるからね。……でも、やっぱ優しいとこは優しいままなんだなあって、よくわかった」
そう言うと、彼女の表情が微笑んではいるけれど少し沈んだ。
申し訳なさそうな、それでいて意味深に見えて、つい前のめりになって先を促す。
「えっと、何か?」
「飲みながら互いの状況とか話してた時にね。私がマネージャーから育成に回らされた経緯で愚痴零しちゃって。そしたらなんか、考えてくれてたみたい」
聞くに、今回事故があった催事場には、育成の木藤さんは足を運ぶ必要はなかったという。