続*もう一度君にキスしたかった
「降ろされちゃったの。ちょっと神経まいっちゃって、心療内科に通ってるうちにね」
はは、と彼女は笑って言ったけど。
もしも自分が、と思えば、激しい憤りが湧いた。
怖い思いをしたのだから無理だろう、という判断だったのかもしれない。
木藤さん本人も、この先マネージャー業を続けられるかどうか、考え始めていたかもしれない。
だけど、被害者である木藤さんの希望もなく一方的に降ろされるのは、酷くないだろうか。
エリアマネージャーは年間通して休みも少なかったり、体力勝負で辛いこともあるけれど、育ててきたエリアにはきっと愛着はあったはずだ。
「……悔しい、それは」
「しかもそれ以降、大阪支社ではエリアマネージャーは男、女は補佐って暗黙の了解みたいになっちゃって……責任も感じてるのよね」
「いや、それは木藤さんのせいじゃあ」
「でも私のことがきっかけだもの。男女平等ったって、どうしたって男性よりは女性のが厳しいわよねえ、世間の目って」