続*もう一度君にキスしたかった
あの誕生日の夜、クレーム対応でお客様の家を訪問していた私の様子をわざわざ見に来てくれたのは、その話を聞いたから余計にだったのかもしれない。
しかもその後、こういう時は男性社員を頼りなさいとか、その言葉が公私混同ではないかどうか、朝比奈さん本人が混乱してるみたいだった。
少し、彼らしくないなと思ったのだけど……その理由に行き付いた気がした。
あの日、エントランスに居た彼は心配してくれたのは伝わったけれど表情はいつもどおりの優しい笑顔だった。
だけど本当は、ひどく焦って駆けつけてくれていたのかもしれない。
「朝比奈さん、言ってました。女性のマネージャーが安心して仕事が出来るようなガイドラインを作らないと、って。木藤さんの件があったからなんですね」
「どうかな、それは前から考えてた風だったけど。多分、私に復帰する意思があるなら、そこを足掛かりにしたいんじゃないのかなあ」
そこで一つ、気になったことがあった。怖い思いをした……というのが、どのくらいの出来事だったのか、そこは推し量れないけれど。
木藤さん自身、マネージャーに復帰したいと思っているのかどうかが気になった。
一時は病院にかかるくらいの出来事だったのなら、怖くはないのだろうか。