続*もう一度君にキスしたかった
顔を覗き込めば、目を閉じて眠っているようだった。
何か嫌な夢でも見ているのだろうか、その表情がとても苦しそうで、思わずもう一度声をかけてしまう。
「朝比奈さん?」
すると、すぐに目が開いてしっかりと目が合った。
「大丈夫ですか? うなされてたから」
やっぱり、夢を見ていたんだろう。
驚いたような、呆けたような顔をしていたけれど、ちゃんと目が私を認識してくれたのがわかった。
ほっと目元が緩んだから。
私は、手に持っていたビニールの手提げ袋を朝比奈さんに掲げて見せた。
「コーヒー買ってきましたよ。ごめんなさい、遅くなって。売店行く途中で……」
すっと、朝比奈さんが真直ぐ手を伸ばしてくる。
てっきり、手提げ袋を取ろうとしているのかと思った。
「真帆」
「えっ」
寝起きの少し擦れた声で名前を呼ばれ、どきりとした。
その隙に取られたのは手提げ袋ではなく、私の腕で。
「キスしたい」
「えっ」
私の身体を引き寄せて両腕をしっかりとつかみ、見上げる目に縋り付かれるようだった。