続*もう一度君にキスしたかった


ようやく、ぴたっと朝比奈さんの動きが止まった。
じっと私を見ていた瞳が横に逸れて、それからきゅっと眉が寄せられる。


まさか。
と、嫌な予感がしてすぐに私も振り向いた。


「あっ。ごめーん、お邪魔みたいだから帰ろっかなって、声掛けようと思って?」


カーテンの向こうから、ひょこっとふたつ、顔が覗いていた。
悪びれもせずニヤニヤ笑っている木藤さんと、赤い顔で焦った表情をしているけれどしっかりこっちを見ている笹木さんだった。


「いえ!すみません朝比奈さん起きたので!」


やっと手が緩んでくれた朝比奈さんから身体を離して引き留めたのだが。


「いやいやいや……ねえ」

「す、すみません、俺もまた後程……」

「後程改めて来られる方が恥ずかしいですから!」


もういちゃいちゃ終わったかなみたいなタイミングで来られる方がもっと嫌だ!


それにふたりとも、帰る帰ると言いつつ顔を引っ込めることもなくこちらを覗いたままだった。


「笹木」


そこへ、朝比奈さんの至極落ち着いた声が笹木さんに向けられて、彼はシャキッと背筋を伸ばし顔だけでなく身体ごとカーテンから姿を見せた。


直立不動だ。


「メッセージ送ってきてた内容のこと?」

「はい! そのことでお伺いしましたスミマセン!」

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