続*もう一度君にキスしたかった
「何がですか?」
「木藤さんはともかく、笹木に見られたのがね」
起こしたベッドに背を凭れさせて座る朝比奈さんは、脇に立ったままの私の手をやんわりと掬い取る。
渋い表情を浮かべつつもう片方の手が私の背にまわり、その手に誘導され寄り添うようにベッドに腰かけた。
「怖い上司で撤してきたのに、イメージが崩れる」
『しまった』
の理由に、思わず吹き出した。
「笑いごとじゃない。誰にも喋らなければいいけど」
「大丈夫じゃないですか? 笹木さん、なんか朝比奈さんに忠実というか……」
言ってはなんだが、忠犬のような。
思えば伊崎と少し似ている。
伊崎と笹木さんとでは恐れの種類が違うような気がするが。
東は伊崎、西には笹木さん。
東西それぞれに忠犬……流石というかなんというか。
「それに、怖いだけの人じゃないって知ってくれてる人がいる方が私は安心です」