綺麗な顔をした悪魔
「ボクの家はかれん君ほどではないよ・・・?」
「いやいや、おまえだってお金持ちだよ。日本で一番有名な会社の社長の一人息子じゃん」
「うんうん。それに、外国でも有名だってママがいってた」
「それにさ、かれんもまなともイケメンだしなぁ。オレ、お前ら見てると切なくなるんだけど・・・」
この会話を繰り広げているのは小学校1年生である。
某有名私立小学校の授業参観日の授業前の子供達の会話だ。
ここにいるのは、みんな由緒正しい家柄のご子息とご息女である。将来の御曹司とご令嬢の集まりである。
中でも、先ほどの二人が断トツで有名だったという話なだけである。
「はい、次はしいなかれん君、お願いします」
「はい」
先生に呼ばれて返事をした彼は、育ちの良さが一目でわかるような雰囲気をしていた。
まだ小学校1年生ながらに、整った顔立ちに落ち着いた雰囲気を持ち合わせていた。
だからこそ、あの作文にこの教室にいる全員がドン引きをしてしまうわけでもあるのだが。
「僕のお父さんとお母さん」
もう10年近く経っているはずなのに、その内容を忘れることはできない。
「僕のお父さんとお母さんは社長さんです。僕は二人の事をすごいと思います。かっこよくて自慢だと思っていました。つい最近までは・・・・・・」
え・・・⁉何がはじまるの・・・?
きっと教室にいる人はこう思ったに違いない。
「お父さんとお母さんは、僕の知らないところで、別の家族を作っていました。多分、フリンとか言われることです。僕はとってもビックリしました。だって、ある日、僕は知らないところで勝手にお兄さんにされていたんだから・・・。それを知ったのは一昨日です。僕の家に知らない子供が訪ねてきました。"ボクたちのパパを返して"こう言われました」
ショッキング過ぎて言葉にならなかった。
「驚きのあまり僕は、パパって誰の事を言っているのかその子供に聞いてしまいました。そうしたら、僕のお父さんの事でした。だから、僕は、その人は僕のお父さんでもあるのだと言ってしまいました。でも、信じてもらえませんでした。"ウソつき"と言われてしまいました。僕は何がどうなっているのか全くわかりませんでした。でも、僕はお父さんに裏切られたと思いました」
「だから、僕はお父さんの秘書さんに聞いてみる事にしました。僕のお父さんは僕以外のお父さんでもあるのかと。そうしたら、その秘書さんは申し訳なさそうな顔をしてその通りだと本当の事を教えてくれました。それから、僕のお母さんもお父さんと同じである事も・・・」