綺麗な顔をした悪魔
「皆は僕を羨ましいと言うかもしれないけど、僕は皆が両親からの無償の愛情をもらっている事の方が羨ましいです。きっと気が付いていないのかもしれませんが、それは奇跡だと思ってもらっても構いません」
「お金ではどうにもできないものを持っている自覚をちゃんと持って下さい。僕も皆を羨ましがらずに、僕を愛してくれている人を大切にするので、皆も忘れないで下さい」
「僕のお父さんとお母さん(仮)は、僕とは血の繋がりはありませんが、僕を心の底から愛してくれています。その事にようやく気が付いた僕は、今、幸せでいっぱいです」
「本当のお父さんとお母さんも愛ではなく、お金をくれるので嫌いではありません。これで、終わります」
この後、拍手ではなく、涙と鼻をすする音が教室に残ったのは仕方のない事だと思う。
そして、この日以来、かれん君を羨ましいと言う人はいなくなった。
だが、この作文のおかげで皆は大切なものに気が付いたと思う。
かれん君を作文は、みんなを泣かせるほどすごかった。
そして、それ以来小学校で親についての作文を書くのが禁止されるほど破壊力が抜群だった。
ついでに、ボクの作文はかれん君の後だったが、これも問題作だと言われてしまった。
「ボクのお父さんとお母さん」
「ボクのお父さんとお母さんはかれん君のところよりひどくはありませんが、二人揃って不倫してます」
「相手は、お父さんが会社の秘書さんで、お母さんは同級生です。そして、これは現在も続いています」
「ラブラブです。たまにお父さんとお母さんのお部屋からあえぎ声らしきものが聞こえてきます。これは、子供の教育に悪いので、ちゃんとホテルでラブラブしてほしいです」
「二人の間に愛はありませんが、ボクには愛をそそいでもらっています。二人とも仕事が早く終わった日や休みの日にはボクと遊んでくれるし、一緒にご飯も食べます。ただし、二人別々ですが」
「ちなみに、ボクのお母さんは女優さんです。よくTVに出ています」
「そんな事もあってか二人とも僕に対して、激甘です。基本的に叱られた事はありません」
「まあ、ボクが優秀だからだとは思いますが」
「そんなお父さんとお母さんですが、ボクは二人の事が大好きです」