【完】恋歌
薄月が闇夜を仄かに照らす。
冷たく閉ざされた古城に色は無い。
広大な城の中は、しっとりとしたゴシック調で整えられている。
主の心をそのまま表したかのような、静かで冷たい雰囲気は、他の誰をも近付けさせない。
深い森の、複雑に入り組んだ場所にあるその古城は、見事なまでに精巧に作り込まれていて、見る者全てを圧倒し、その何十倍も魅了する。
けれど、どれだけ夢に見て焦がれても、人々は自ら城へと赴く事は出来ない。
…そう。
選ばれし者以外は。