【完】恋歌
暗い部屋の窓辺に、音も立てずに何かを待ち佇んでい
る男の顔は、闇の中でも蒼白い事が分かる程だった。
その顔からは、人としての生気も温もりも全く感じられない。
そして、瞳には城同様、何の色も映ってはいなかった。
どれくらいそうしていただろうか…?
ふと、部屋の中に、やはり気配も持たずに霧のような影がスルスルと立ち込めて、やがてそれは獣の形に変化して行った。
そして、徐に窓辺に佇む男…主の元へと跪く。
唸り声にも似た囁きに対して彼は静かに口を開いた。