【完】恋歌

「震えてるね…俺が怖い…?」


その一言に、彼女の形の良い口唇が歪んだ。


「誰が…。恐怖など感じやしない…」

「じゃあ、どうして…そんな瞳で俺を見るの?」



ひゅっと風が二人の間を駆け抜ける。

月はさっきよりハッキリとその存在を映し出し、妖しく揺れた。

沈黙は剣よりも強く、胸に突き刺さる。


「…っ。お前こそ、どうしてそんな顔をする?」

「俺?俺の事が気になる…ねぇ?」


答えをはぐらかすようにして彼は、微笑んでから一歩距離を詰めた。

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