【完】恋歌
Side:凛音
ずきん、ずきん
彼女は彼の腕の中で、そんな音を聞いた。
彼の心臓は正常に動いているのだろうか…。
そんな風に思ってしまうほど、不規則で不安定な音がしている。
「アークライト」
「武瑠、でいいよ」
「……武瑠…放せ」
この、心細い鼓動に、泣きたくなってしまいそうな自分は、まだそんな人間的な感情があったのかと思うほどで、どうしていいのか全く検討もつかない。