【完】恋歌
「行きずりの想いなんて、そう長くは続かないものなんだよ」
と、囁きながら。
抱き締められ、髪を撫でられ、彼がヴァンパイアだと知ってもきっと、惹かれて身を差し出す人は多いだろうに…だから、幾人と数え切れない犠牲者が出ているのに…それでも、彼は本当のアイが欲しいという。
本当のアイとはなんだ?
彼女は遠い記憶を辿り続けるけれど、どこにも温かなアイも、燃えるようなアイも感じたことがないことに酷く落胆した。
何を落ち込むことがあるんだ。
自分の中に流れる2つの血で、そんなことを望んだら…きっと、自分は内側から破壊されるだろう。
誰にも望まれず、一人で歩んできた今まで。
それを、寂しいと思ったことはなかったはずだ…。