【完】恋歌


「行きずりの想いなんて、そう長くは続かないものなんだよ」


と、囁きながら。



抱き締められ、髪を撫でられ、彼がヴァンパイアだと知ってもきっと、惹かれて身を差し出す人は多いだろうに…だから、幾人と数え切れない犠牲者が出ているのに…それでも、彼は本当のアイが欲しいという。



本当のアイとはなんだ?


彼女は遠い記憶を辿り続けるけれど、どこにも温かなアイも、燃えるようなアイも感じたことがないことに酷く落胆した。


何を落ち込むことがあるんだ。

自分の中に流れる2つの血で、そんなことを望んだら…きっと、自分は内側から破壊されるだろう。


誰にも望まれず、一人で歩んできた今まで。
それを、寂しいと思ったことはなかったはずだ…。

< 68 / 79 >

この作品をシェア

pagetop