【完】恋歌
Side:武瑠
彼女の髪から匂い立つ、なんとも言えない香りを鼻孔いっぱいに吸い込んで…。
このままで永遠にいられればいいのに、と。
滑稽にも願う自分がいて、おかしくなった。
名前を呼べば、その自分の声でさえ甘く心に響いて切なくなり…どうしも欲しいと思った。
「ねぇ…凜音?」
「…ん…」
「オレが凜音に向けている感情は、アイ以外の何物でもないよ。オレには凜音が必要なんだ…」
「……」
全然信用しようとしない彼女の鼻に、ちょこんと触れれば、彼女は今まで見せたことのないような恥じらいを含んだ表情で、オレを睨んだ。
「お前の言うことはいちいち胡散臭い」
あぁ、こんな表情をさせられるのは自分だけなんだ。
そう思うと、更に愛しさが増す。