【完】恋歌
そう、願うことさえいけないことなのだろうか。
許しては貰えないのだろうか。
オレは、彼女から少しだけ身を離して、彼女の瞳を見つめた。
「ねぇ…?このまま一緒に逃げようか…」
「…どこへ…?」
「誰にも邪魔されない場所まで…」
「…どうやって…?」
不安そうな漆黒の瞳。
その瞳に微かに浮かぶ、紅と蒼の炎。
そして、其処に映る、オレという得体のしれない影。
「二人で、…ここから消えればいい…」
そう言って、オレは彼女の口唇に冷たい接吻けをした。
熱を持たない、冷めた接吻けを…。