3→1feet
すらりと背が高い甲斐くん、柔らかく響く声の甲斐くん、眼鏡が似合っていて目鼻立ちも整っている甲斐くん、ふわりと微笑む姿が破壊的な威力を持つ甲斐くん。
みんなの人気者、甲斐くん。
私なんかじゃ手が届かないって思ってずっと見ているだけだった。でも年末にため込んでいたドラマを見て、ハッピーエンドに背中を押されて勇気がわいてきた。
ダメ元でもいいじゃないか。
それでも休み明けになると急に尻込みしちゃって奮い立った気持ちはまたかくれんぼ。
このままじゃ駄目だ。
そう思っていっぱい恋愛ドラマや小説、漫画を読んでまた勇気をもらったのだ。
勢いのままチョコレートを買って、今日を待って、さあ、渡すぞ!と意気込んだ時だったのに。
「…ちょっと…分からない…かな。」
戸惑いを隠せなくていつもより小さな声になってしまった。
カバンの中で掴んでいた紙袋を持つ手が震える。
「鈴原って香水変えた?鈴原の香りかな。」
「ええっ!?」
大きな声で驚く私を他所に甲斐くんはずいっと顔を寄せて確かめてきた。
やめて、近い!
なんか切ない!
私の心の悲鳴も届かず甲斐くんはその場で首を傾げてくる。
「わ、私じゃないと…思うんだけど…。」
「うん、本当だ。変わってない。」
肩を竦めて全身を強張らせる私の異変に気付いたのか、甲斐くんは爽やかに距離を取ってまた横並びでエレベーターを待つポジションについた。
「いつものだ。柑橘系?」
私の顔はひきつったまま、何度か肯定の意味を込めて頷く。
みんなの人気者、甲斐くん。
私なんかじゃ手が届かないって思ってずっと見ているだけだった。でも年末にため込んでいたドラマを見て、ハッピーエンドに背中を押されて勇気がわいてきた。
ダメ元でもいいじゃないか。
それでも休み明けになると急に尻込みしちゃって奮い立った気持ちはまたかくれんぼ。
このままじゃ駄目だ。
そう思っていっぱい恋愛ドラマや小説、漫画を読んでまた勇気をもらったのだ。
勢いのままチョコレートを買って、今日を待って、さあ、渡すぞ!と意気込んだ時だったのに。
「…ちょっと…分からない…かな。」
戸惑いを隠せなくていつもより小さな声になってしまった。
カバンの中で掴んでいた紙袋を持つ手が震える。
「鈴原って香水変えた?鈴原の香りかな。」
「ええっ!?」
大きな声で驚く私を他所に甲斐くんはずいっと顔を寄せて確かめてきた。
やめて、近い!
なんか切ない!
私の心の悲鳴も届かず甲斐くんはその場で首を傾げてくる。
「わ、私じゃないと…思うんだけど…。」
「うん、本当だ。変わってない。」
肩を竦めて全身を強張らせる私の異変に気付いたのか、甲斐くんは爽やかに距離を取ってまた横並びでエレベーターを待つポジションについた。
「いつものだ。柑橘系?」
私の顔はひきつったまま、何度か肯定の意味を込めて頷く。