3→1feet
不思議そうに振り返る甲斐くんはやっぱり素敵で、とてもうまくいく保証なんてないけどこのままで終わりたくない。

「甲斐くん、あのね。」

右手をカバンの中に入れて紙袋を掴んだ。

もう、ぶつかっていくしかない。

覚悟を決めて顔を上げ、私は甲斐くんにその袋を差し出した。

「え?」

「これ、良かったら貰ってくれる?」

甲斐くんの目が紙袋と私を何度も行き来して驚きを隠せないでいた。

ちゃんと伝えないと分かってもらえない。

頑張れ、頑張れ私。

「甲斐くんに渡したくて用意したの。私の、気持ちです。」

甲斐くんが息を飲むのが分かった。

ごめんなさい、突然に渡して驚くよね。

しかもいい大人がなんのアプローチも無しに急に思いを押し付けるなんて下手だよね。

面と向かって言えなくて心の中でいろんな謝罪の言葉を甲斐くんに言い続けた。

紙袋は、チョコレートはまだ私の手から離れてくれない。

受け取って貰えないのかな。

切なくなって引き下がろうと手を動かした瞬間、その手に抵抗を感じて俯いていた顔を起こした。

「…やった。」

嬉しそうに満面の笑みを浮かべる甲斐くんがチョコレートを掴んでいる。

「え?…わっ!」

状況を把握する前に、甲斐くんはチョコレートをしっかりと握りしめて私の手を掴み歩き始めた。

「甲斐くん?!」

「やった!マジで!?うわー!めっちゃ嬉しい!」

「ええっ!?」

< 7 / 9 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop