《完結》君と稽古した日々 ~アーサ王子の君影草~【番外編】
「ぃった……くない? あれ?」
「っ!?」
ラインアーサは無意識下で目の前に小さな風の壁を作っていた。
シュサイラスア大国の民は風を操る煌像術が得意である。王族であるローゼン家のラインアーサも例外ではなく風を操る事が出来るのだ。
その風の壁はジュリアンの攻撃を遮りラインアーサの身体を護ったのだが肝心の本人はそれに気付いてない。
風はラインアーサが恐る恐る瞳を開ける頃には身体の周りに溶け込むようにしてふわりと消えた。
ジュリアンはほっと胸をなでおろし、剣を投げ出すとラインアーサに駆け寄った。
「アーサごめん。俺つい…」
「僕なら大丈夫。それよりジュリの方そこ膝から血が出てるよ」
「へ? あ、ほんとだ」
「さっき咄嗟に投げた僕の剣に当たったのかも」
「げ! 嘘だろぉ? お前の攻撃なんて絶対当たらないって豪語したのに!! うわ情けないな俺…!」
「あはは、偶然だよ」
「あったりまえだろ! ったく、俺カッコ悪すぎー」
「えっと、怪我させてごめんなジュリ。手当するから膝見せて…」
そう言って目の前に屈むラインアーサ。
まるで部下が取る忠誠の姿勢の様だ。
これでは立場が逆転だとジュリアンは慌てて拒否をした。
「い、いいって! このくらい怪我のうちに入らないしすぐ治る」
「でも、僕が……俺が唯一得意なのは癒しの煌像術くらいなんだから手当させて!」
「いやでもさ。主であるお前にそんな事させられない」
「駄目。手当する」
「うっ…分かったよ。頼むな」
「まかせて!」
屈みこんだラインアーサに上目遣いで強く言われ、何故か逆らえないジュリアンであった。
ラインアーサが怪我をした膝に手を翳すと周りに暖かい風が集まってくる。そよ風にも似たそれは傷口を優しく撫ぜるように癒してゆく。
ラインアーサは筋金入りのお人好しで、しかもやると言い出したら聞かない頑固な所がある。
普段から自分よりも他人を優先し、全くと言っていいほど王子だという立場を振りかざさない。それ故に多少頼りない所もあるがそんな主を大切に、誇りに思っている。
その上にジュリアンが溺愛している妹、リーナの “命の恩人” なのだからそれは尚更だ。
「〜っ…くすぐったい」
「我慢して! ほら。もう治ったでしょ?」
「ああ。ありがとな! ほんと、相変わらず癒しの煌像術だけは見事だよな……」
「っ!?」
ラインアーサは無意識下で目の前に小さな風の壁を作っていた。
シュサイラスア大国の民は風を操る煌像術が得意である。王族であるローゼン家のラインアーサも例外ではなく風を操る事が出来るのだ。
その風の壁はジュリアンの攻撃を遮りラインアーサの身体を護ったのだが肝心の本人はそれに気付いてない。
風はラインアーサが恐る恐る瞳を開ける頃には身体の周りに溶け込むようにしてふわりと消えた。
ジュリアンはほっと胸をなでおろし、剣を投げ出すとラインアーサに駆け寄った。
「アーサごめん。俺つい…」
「僕なら大丈夫。それよりジュリの方そこ膝から血が出てるよ」
「へ? あ、ほんとだ」
「さっき咄嗟に投げた僕の剣に当たったのかも」
「げ! 嘘だろぉ? お前の攻撃なんて絶対当たらないって豪語したのに!! うわ情けないな俺…!」
「あはは、偶然だよ」
「あったりまえだろ! ったく、俺カッコ悪すぎー」
「えっと、怪我させてごめんなジュリ。手当するから膝見せて…」
そう言って目の前に屈むラインアーサ。
まるで部下が取る忠誠の姿勢の様だ。
これでは立場が逆転だとジュリアンは慌てて拒否をした。
「い、いいって! このくらい怪我のうちに入らないしすぐ治る」
「でも、僕が……俺が唯一得意なのは癒しの煌像術くらいなんだから手当させて!」
「いやでもさ。主であるお前にそんな事させられない」
「駄目。手当する」
「うっ…分かったよ。頼むな」
「まかせて!」
屈みこんだラインアーサに上目遣いで強く言われ、何故か逆らえないジュリアンであった。
ラインアーサが怪我をした膝に手を翳すと周りに暖かい風が集まってくる。そよ風にも似たそれは傷口を優しく撫ぜるように癒してゆく。
ラインアーサは筋金入りのお人好しで、しかもやると言い出したら聞かない頑固な所がある。
普段から自分よりも他人を優先し、全くと言っていいほど王子だという立場を振りかざさない。それ故に多少頼りない所もあるがそんな主を大切に、誇りに思っている。
その上にジュリアンが溺愛している妹、リーナの “命の恩人” なのだからそれは尚更だ。
「〜っ…くすぐったい」
「我慢して! ほら。もう治ったでしょ?」
「ああ。ありがとな! ほんと、相変わらず癒しの煌像術だけは見事だよな……」