《完結》君と稽古した日々 ~アーサ王子の君影草~【番外編】
「うーん。義父さん、、ジュストベルじい様は何かと厳しいからなぁ。でもそれはアーサ殿下はもちろん、お前の事もちゃんと思っての発言なんだからな?」
「うん…」
「そうやってたくさん悩んでたのか? お前も苦しかったな」
苦笑を浮かべたグレィスに髪をぐしゃぐしゃとかき混ぜられる。撫でられると更に恥ずかしくなり鼻まで湯に浸かってぷくぷくと水面を揺らした。
「……自分でも何となく分かってはいたんだ。このままじゃあ駄目だって。でもアーサは俺にとって特別だから。主なのはもちろん、リーナの、命の恩人だし…」
「そうだな」
以前ジュリアンはまだ幼いリーナに、命に関わるほどの大怪我をさせてしまった事がある。リーナがつかまり立ちを覚え、伝い歩きを出来るようになった頃だった。
お守りをしていたジュリアンが一瞬目を離した隙に、二階の窓から外に転落したのだ。
直ぐに気づき駆けつけたものの、ぐったりと地面に横たわるリーナの顔は痣と擦り傷だらけで全身のあちこちに打撲傷を負っていた。
思い出すと今でも全身が凍り付きそうになる。
その当時、五歳だったラインアーサは潜在能力である癒しの煌像術を一気に暴発させリーナの怪我はもちろん、本来だったら消えてしまっていたであろう命を救った。
しかしそれだけで暴発した力は収まらず王宮にいる人全ての負の感情などをも取りさり、全てを癒そうとした。その為ラインアーサはその後十日の間極めて危険な昏睡状態に陥ったのだ。
その凄まじい迄の潜在能力は、現在行使出来ない様に特殊な施術で封印してある。
ラインアーサの術力が弱いのはそういったからくりだ。元から力が弱い訳では無い。
「アーサは幼なじみでも、どんなに気が合ってもこの国の王子で、ゆくゆくは国王になるべく存在で。俺、そんなアーサの人生において足を引っ張る様な存在になりたくないんだ。邪魔したくない…」
「……ジュリアンはアーサ殿下に邪魔って言われたのか?」
「言われた、訳じゃあない…」
「なら心配ない。本当はお前も分かってるだろ?」
「でも、アーサはやさしいから言わないだけで本当は…」
本当は知っている。ラインアーサはちゃんと自分を必要としてくれている。ただ自分に自信が無いから逃げているだけだ。
「……違うだろ。もっとはっきり言おうか? いいか、お前はアーサ殿下にとって〝必要な人間〟だ。もし違うって言うならそうなればいい」
「うん…」
「そうやってたくさん悩んでたのか? お前も苦しかったな」
苦笑を浮かべたグレィスに髪をぐしゃぐしゃとかき混ぜられる。撫でられると更に恥ずかしくなり鼻まで湯に浸かってぷくぷくと水面を揺らした。
「……自分でも何となく分かってはいたんだ。このままじゃあ駄目だって。でもアーサは俺にとって特別だから。主なのはもちろん、リーナの、命の恩人だし…」
「そうだな」
以前ジュリアンはまだ幼いリーナに、命に関わるほどの大怪我をさせてしまった事がある。リーナがつかまり立ちを覚え、伝い歩きを出来るようになった頃だった。
お守りをしていたジュリアンが一瞬目を離した隙に、二階の窓から外に転落したのだ。
直ぐに気づき駆けつけたものの、ぐったりと地面に横たわるリーナの顔は痣と擦り傷だらけで全身のあちこちに打撲傷を負っていた。
思い出すと今でも全身が凍り付きそうになる。
その当時、五歳だったラインアーサは潜在能力である癒しの煌像術を一気に暴発させリーナの怪我はもちろん、本来だったら消えてしまっていたであろう命を救った。
しかしそれだけで暴発した力は収まらず王宮にいる人全ての負の感情などをも取りさり、全てを癒そうとした。その為ラインアーサはその後十日の間極めて危険な昏睡状態に陥ったのだ。
その凄まじい迄の潜在能力は、現在行使出来ない様に特殊な施術で封印してある。
ラインアーサの術力が弱いのはそういったからくりだ。元から力が弱い訳では無い。
「アーサは幼なじみでも、どんなに気が合ってもこの国の王子で、ゆくゆくは国王になるべく存在で。俺、そんなアーサの人生において足を引っ張る様な存在になりたくないんだ。邪魔したくない…」
「……ジュリアンはアーサ殿下に邪魔って言われたのか?」
「言われた、訳じゃあない…」
「なら心配ない。本当はお前も分かってるだろ?」
「でも、アーサはやさしいから言わないだけで本当は…」
本当は知っている。ラインアーサはちゃんと自分を必要としてくれている。ただ自分に自信が無いから逃げているだけだ。
「……違うだろ。もっとはっきり言おうか? いいか、お前はアーサ殿下にとって〝必要な人間〟だ。もし違うって言うならそうなればいい」