《完結》君と稽古した日々 ~アーサ王子の君影草~【番外編】
「ったく……じゃあいっその事、お前が女だったら良かったのにな。もしそうならそばで、方時も離れずに守ってやったのになぁ」
さっきのお返しと言わんばかりにわざとらしくラインアーサの耳元に顔を近づけて呟いてみた。
案の定ラインアーサはものすごい勢いで飛び退くと訳がわからないと言った困惑気味な表情で見つめ返してきた。その表情に何故かほんの少し苛立つ。
「っ! ……なんで、何でそんな事言うんだよ…! どど、どうしてそんな事…っ」
「……なーんてな! 何マジになってんだよ」
それでも意地悪が過ぎたかとちくりと胸が痛み、即座に冗談めかして明るく誤魔化した。
喧嘩はもう懲り懲りなのだ。
ラインアーサも同じ思いなのか、何処と無くほっとしたような何時もの顔つきに戻った。
「っジュリ! 俺で遊んでるだろ!!」
「どうかなー? からかい甲斐があるのは確かだけど」
「あーもう! そうやって馬鹿にして! ジュリに相談した俺が馬鹿だったよ。もうこの話は忘れてよね」
「はいはい」
「絶対だだからな!」
「わかったって」
何度も念を推すラインアーサにやれやれと返事をする。この話はもう終いだと言わんばかりに踵を返すラインアーサ。しかし相当気にしている様子だ。
「うーん、どうやったら男らしくなれるんだ? とりあえずもっと鍛錬しないと。そうだ、今度ブラッド兄様に会った時聞いてみよう…」
王宮の敷地に入り、ぶつぶつと独り言を言いながら去っていくラインアーサの背中を見つめ、ジュリアンは溜息混じりにぼやいた。
「……人の気も知らないでさ」
訓練所に入ると決めた頃からラインアーサの側にいるとどうも調子が狂うのだった。理由は自分でも分からないのだが。
もちろん傍に居るのが嫌なわけではないが、来秋が待ち遠しかった。訓練所に入ってしまえばこのよく分からない調子も元に戻る筈だ。
調子が悪いといえば最近喉の調子が悪い。 気温の低い日が続いたので風邪でも引いたのだろうか、ほんの少し気怠い様な気がしてきた。
「そうだ! ジュストじい様にお茶でも煎じてもらうか!」
これは名案と思い立ったジュリアンはそのままジュストベルの部屋へと足を向けた。部屋の扉を軽く叩き、返事を待たずに中へと入る。
暖炉の前でお気に入りの椅子に身体を預け読書をしていたジュストベルだが、ジュリアンに気付くなり書物をばさりと落とした。
さっきのお返しと言わんばかりにわざとらしくラインアーサの耳元に顔を近づけて呟いてみた。
案の定ラインアーサはものすごい勢いで飛び退くと訳がわからないと言った困惑気味な表情で見つめ返してきた。その表情に何故かほんの少し苛立つ。
「っ! ……なんで、何でそんな事言うんだよ…! どど、どうしてそんな事…っ」
「……なーんてな! 何マジになってんだよ」
それでも意地悪が過ぎたかとちくりと胸が痛み、即座に冗談めかして明るく誤魔化した。
喧嘩はもう懲り懲りなのだ。
ラインアーサも同じ思いなのか、何処と無くほっとしたような何時もの顔つきに戻った。
「っジュリ! 俺で遊んでるだろ!!」
「どうかなー? からかい甲斐があるのは確かだけど」
「あーもう! そうやって馬鹿にして! ジュリに相談した俺が馬鹿だったよ。もうこの話は忘れてよね」
「はいはい」
「絶対だだからな!」
「わかったって」
何度も念を推すラインアーサにやれやれと返事をする。この話はもう終いだと言わんばかりに踵を返すラインアーサ。しかし相当気にしている様子だ。
「うーん、どうやったら男らしくなれるんだ? とりあえずもっと鍛錬しないと。そうだ、今度ブラッド兄様に会った時聞いてみよう…」
王宮の敷地に入り、ぶつぶつと独り言を言いながら去っていくラインアーサの背中を見つめ、ジュリアンは溜息混じりにぼやいた。
「……人の気も知らないでさ」
訓練所に入ると決めた頃からラインアーサの側にいるとどうも調子が狂うのだった。理由は自分でも分からないのだが。
もちろん傍に居るのが嫌なわけではないが、来秋が待ち遠しかった。訓練所に入ってしまえばこのよく分からない調子も元に戻る筈だ。
調子が悪いといえば最近喉の調子が悪い。 気温の低い日が続いたので風邪でも引いたのだろうか、ほんの少し気怠い様な気がしてきた。
「そうだ! ジュストじい様にお茶でも煎じてもらうか!」
これは名案と思い立ったジュリアンはそのままジュストベルの部屋へと足を向けた。部屋の扉を軽く叩き、返事を待たずに中へと入る。
暖炉の前でお気に入りの椅子に身体を預け読書をしていたジュストベルだが、ジュリアンに気付くなり書物をばさりと落とした。