《完結》君と稽古した日々 ~アーサ王子の君影草~【番外編】
 ラインアーサは諦めた様にむくりと起き上がると朝のやわらかい光の中、一糸まとわぬ姿で大きく伸びをした。何となく直視出来ずに視線を泳がせてしまう。別にお互いの裸など見慣れている筈なのだが。

「……お前さ、寝巻きくらいちゃんと着ろよ。てゆーかいつもそんな格好で寝て風邪ひかねぇの?」

「ん、大丈夫……」

「ふーん、、」

「お湯浴びてくる」

 ぼんやりしたままベッドから降り、素足でぺたぺたと自室の浴室に向かうラインアーサの後ろ姿に声をかけた。

「お、おう! 早く身支度してきちんと朝めし食えよ? じゃあな!」

 ラインアーサが浴室に入ったのを見届けると部屋を後にした。

「ふぅ……なんか。前から思ってたけど、アーサって変に雰囲気あるってか、最近特に色気的な……いや、何言ってんだ俺! そもそもあいつは俺より年下のくせに!!」

 頭をぶんぶんと左右に振りながら廊下を歩いていると食堂の方からリーナが向かってきた。

「あ、おにいちゃん! アーサ様起きた? イリア様がね、なかなかアーサ様が来ないって心配してたの」

「ああ、もう起きたから心配ないぜ! そのうち来るだろ。ったくほんとアーサの朝寝坊には参るよな」

「アーサ様も低血圧だもの仕方ないよ」

「まあな。王妃様もか?」

「うん、、今日もご朝食はお部屋で。最近特に体調が優れないらしくて…」

 エテジアーナの体調を気遣って心配そうに眉を下げるリーナを元気づけようとふわふわの癖毛頭を優しく撫でた。

「大丈夫だって! 王宮にはエルベルト先生達がいるんだ、すぐに王妃様も元気になるさ。リーナも大変だろうけど母さんに色々教わって頑張れよ!」

「うん、ありがと! おにいちゃんは今から会議の間?」

「そ! 早く行って準備手伝わないと、またじい様に大目玉食らうからな」

 大袈裟におどけた態度を取るとやっとリーナに笑顔が戻った。リーナと別れ、ジュリアンが会議の間に着くと既に大方の準備は整っていて慌てて手伝いに参加した。

 座席や資料などを整え終わる頃、すました顔でラインアーサが現れた。

「おはよう。ジュリ」

「お、ちゃんと起きてきたな! 寝坊助アーサ」

「ん、朝は起こしてくれてありがとな」

 ややはにかんでいるがしっかり目が覚めた様で、朝の寝癖爆発頭とは違い髪は綺麗に梳かされている。公的な場に合わせ、普段よりも整然とした身なりだ。
< 57 / 103 >

この作品をシェア

pagetop