《完結》君と稽古した日々 ~アーサ王子の君影草~【番外編】
足取りの軽いジュリアンに対しラインアーサの足取りは若干重い。
「どうしたー? アーサ。元気ないぞ!」
「あー、うん……」
ラインアーサは甘いものを好む傾向にあり、中でも焼き菓子は大のお気に入りだ。
国王のライオネルはもちろんだが、王妃エテジアーナと、王女イリアーナはラインアーサにたいそう甘い。ラインアーサのこの性格は二人が甘やかしすぎた所為だと言っても誰一人驚かないであろう。
今日も……というかほぼ毎週だが、ラインアーサの好物である焼き菓子をたくさん焼いた為にこうして呼び立てられたのだ。
「焼き菓子はお前の大好物だろ! 早く汗流して頂きに行こうぜ」
「待ってよジュリ!」
「やだねー! 早く付いて来いって」
少し元気のないラインアーサをわざと置いていく様に走り出し、浴場まで続く廊下の角を曲がろうとした所で顔面を思い切り何かにぶつけた。
「…っいってて! なんだ?」
痛む顔を擦りながら何に衝突したのか確認すると目の前には見慣れた執事服…。
嫌な予感しかしない。
静かに顔を上げると鬼の様な形相の人物と目が合う。
ラインアーサの教育係にして、非常に厳格な祖父ジュストベルがジュリアンを見下ろしていた。
「さて、廊下は走っても良いのでしたかな? ジュリアン」
「うっ…ごめんなさい、ジュストじい様!!」
丁寧な言葉遣いとは裏腹な妙に圧のかかった問いかけにジュリアンの背筋はぴんと伸びた。
「何故貴方はいつも廊下を走るのですか? 何度も何度も注意されてよく飽きないですね」
「本当にごめんなさい、以後気をつけます! でも今日は急いでて…」
「でも? 急いでいても廊下は走らないものですよ。ねえ、ラインアーサ様」
小走りで駆けてきたラインアーサにそう声をかけるジュストベル。
「はあ、はあ……ジュリ?! 大丈夫? ってあれ、ジュストベルどうしたの?」
「そうですね。今廊下を走る二人組みの説教をしている所です」
「二人組み?!」
「ええ。たった今増えましたので」
「ごめんっ、アーサ…」
「…!」
揃ってジュストベルからしっかりとお叱りを受け遅くなってしまった分、浴場に着くなり二人は素早く脱衣し速やかに汗を流す。
「急げアーサ! もうすぐ時間だ」
「分かってるけど半分は急に走ったジュリのせいだからな」
とばっちりとも言える処遇に思わずぼやく。
「どうしたー? アーサ。元気ないぞ!」
「あー、うん……」
ラインアーサは甘いものを好む傾向にあり、中でも焼き菓子は大のお気に入りだ。
国王のライオネルはもちろんだが、王妃エテジアーナと、王女イリアーナはラインアーサにたいそう甘い。ラインアーサのこの性格は二人が甘やかしすぎた所為だと言っても誰一人驚かないであろう。
今日も……というかほぼ毎週だが、ラインアーサの好物である焼き菓子をたくさん焼いた為にこうして呼び立てられたのだ。
「焼き菓子はお前の大好物だろ! 早く汗流して頂きに行こうぜ」
「待ってよジュリ!」
「やだねー! 早く付いて来いって」
少し元気のないラインアーサをわざと置いていく様に走り出し、浴場まで続く廊下の角を曲がろうとした所で顔面を思い切り何かにぶつけた。
「…っいってて! なんだ?」
痛む顔を擦りながら何に衝突したのか確認すると目の前には見慣れた執事服…。
嫌な予感しかしない。
静かに顔を上げると鬼の様な形相の人物と目が合う。
ラインアーサの教育係にして、非常に厳格な祖父ジュストベルがジュリアンを見下ろしていた。
「さて、廊下は走っても良いのでしたかな? ジュリアン」
「うっ…ごめんなさい、ジュストじい様!!」
丁寧な言葉遣いとは裏腹な妙に圧のかかった問いかけにジュリアンの背筋はぴんと伸びた。
「何故貴方はいつも廊下を走るのですか? 何度も何度も注意されてよく飽きないですね」
「本当にごめんなさい、以後気をつけます! でも今日は急いでて…」
「でも? 急いでいても廊下は走らないものですよ。ねえ、ラインアーサ様」
小走りで駆けてきたラインアーサにそう声をかけるジュストベル。
「はあ、はあ……ジュリ?! 大丈夫? ってあれ、ジュストベルどうしたの?」
「そうですね。今廊下を走る二人組みの説教をしている所です」
「二人組み?!」
「ええ。たった今増えましたので」
「ごめんっ、アーサ…」
「…!」
揃ってジュストベルからしっかりとお叱りを受け遅くなってしまった分、浴場に着くなり二人は素早く脱衣し速やかに汗を流す。
「急げアーサ! もうすぐ時間だ」
「分かってるけど半分は急に走ったジュリのせいだからな」
とばっちりとも言える処遇に思わずぼやく。